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2006年12月14日 (木)

溝口健二CINEMA「祇園の姉妹」



大学の頃、映画が好きで、就活の直前まで本気で映画配給会社へ就職したいと考えるほどだった(当時、業界はどん底で、あまりの門の狭さに唖然とした)。
特に古い映画が好きで、日本映画を観る場合は、よく今はなき並木座へ通った。その中で特に好きだった監督が溝口健二と成瀬巳喜男だった。いい映画はスクリーンで観なきゃ気が済まず、タイトルを書き出しては、毎号、PIAに載るインディックスと睨めっこしていた(ネットが普及し、簡単に検索できる今のご時世から考えると、石器時代のようだ)。だから、自分で書き出した「見たい映画リスト」はなかなか減らなかった。

その一本を、昨日見た。

溝口健二監督の作品「祇園の姉妹」だ。

原稿書きの合間に何気なく映画検索をしてみると、今日一回ぽっきりの上映と出ていた。いても立ってもいられず、上映される京橋の東京国立近代美術館フィルムセンターへ走った。
スクーターで40分。
国立のフィルムセンターというだけあって、料金も安くて500円。
意外に大勢の人が来ていたが、大半が60歳以上の男性か、っぽい若者たちだった。

この作品は、1936年製作。上映時間69分と短め。

内容は、祇園の花街に住む芸者姉妹の話。
(こっからネタばれドス・・・)
姉は義理堅く、妹は計算高いという対照的なふたり。その家に家業をつぶした姉の旦那が転がり込んでくる。姉は一生懸命助けようとするが、妹は裏工作をして金を握らせ、姉がいない間に、追い出してしまう。その上、新しい旦那を宛がおうとする。みな頼りない姉の将来を思っての行動だが、それが知れて、姉は出て行ってしまう。妹は妹で呉服問屋の番頭の気を引いて反物を巻き上げる。それが呉服屋の主人が知り、妹に意見をしに行くが、逆に丸め込まれて、彼女の旦那になってしまう。ここまでは、テンポよく、とてもコミカルに描かれていて、会場からも笑い声が湧いていた。
しかし、呉服問屋の主人と妹の仲を知った番頭は首を切られ、ふたりをねたんで、店の奥さんに告げ口をするところから、急にシリアスな展開になってくる。
問屋の主人からの使いという運転手の車に乗ると、それはチンピラに成り下がった元番頭の仕業で「今日は恨みを聞いてもらうよ。痛い目に合わせてやる」と言う。妹は、走る車から飛び降りて、大怪我をしてしまう。
病院に担ぎ込まれたと知った姉は驚き、駆けつける(このとき、姉は元の旦那と一緒に暮らしている)。治療室から出てきた妹は、全身包帯だらけの痛々しい姿に変わり果てていた。
自分で歩く事も出来ずに、看護婦に負ぶわれながらつぶやく。

「男なんかに負けてたまるか。これくらいのことで、私は負けない。芸子ひとりにこんなことする男に負けてたまるか・・・」

それを横で聞いている姉は

「だから言わんこっちゃない。少しは人の気持ちというものを考えて生きていかなきゃ人の恨みを買ってこんなことになるんだよ・・・」

という内容の事をつぶやく。

しかし、姉が服を取りに家へ帰ると、旦那は里で仕事の口があり、姿を消してしまっていた。女中に聞くと
「こんな頼りない男より、もっといい旦那を探しなさい」
だった。

うなだれて病院へ戻る姉。その事を知って妹は言った。

「だから言わんこっちゃない。姉さんは世間に申し訳が立つ立派なことをしてきたつもりでも、世間は姉さんになにをしてくれた?男はみんな芸者を金で弄ぶだけや。なんでこんな商売があんねん。私たちはどうやって生きていけばいいの」

と泣き叫んで幕が下りる・・・。

日本の封建的な構造の下でうまく生きることの出来ない姉妹の姿が、細部にまで当時の祇園の日常にこだわった演出で、描かれていく。

勝手な男。泣く女。

擦り切れるほど繰り返されて描かれる構造だが、それは、それが現実だからだ(ちょっと肩身が狭いな・・・)。それを単純明快だが、押し迫るリアリティーを持って描かれている。
こういう力強い映画を観ると、現在の複雑極まる展開を追う映画やその他の作品の多さを考えてしまう。もっとシンプルで強いものが欲しくなる。
複雑さと深さは違う。

ただ、新しいものの宿命は、過去の偉業と言える数々の作品を超えなければいけないという課題が付きまとうことだ。それに立ち向かうには、どうしても技巧的にならざるをえないのだろうかとも思えてくる。それと同時に社会も複雑になって来ている。複雑と言うよりは、元は何も変わっていないが、そこに何重にもヴェールが重なり、見えにくく、あるいは見てくれだけ別物になっているようなものが多い。
そう考えると、どうしても、人も街の景色も昔より排他的と言わざるを得ない。そう思うと

「ここはいっちょストレートに力強いやつを作りてえ!」

と文章でも写真でもやりたくなってくる(いつの間にか自分の仕事のことになってる?????)。

堂々巡り・・・。
暗中模索・・・。

(話を戻して)
実は、この妹役、山田五十鈴が演じている。オラの年代でも、山田美鈴といえば、仕事人シリーズに出てくるおばあさんでしかない。だが、ここでは、多分、二十歳くらいじゃないだろうか。文字通り、眩しいほどの美しさで、演技も演技とは思えないうまさだ。問屋の主人を丸め込むところなんて、もう一度見たいくらいだ(笑。そして、今でも現役で舞台に立っているのではなかったっけ?杉村春子どころではない古株の名女優だ。彼女は成瀬巳喜男の「流れる」で凄い!と思った。
ひと目、舞台も見たくなった。
(でも、今は事実上隠居状態らしい。年を考えれば、無理もないか・・・)

「祇園の姉妹」DVD(あるんだ・・・・)

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コメント

あぁ・・・わたしも溝口健二さんの作品を観たかったんですよ。(観てないのは日本人として恥ずかしい?!ごめんなしゃい・・・;)邦画って本当は良いのがたくさんあるはずなんですけれど、普段生活している分には、なかなか埋もれちゃって見えない。もっといっぱい情報あつめなきゃな。

それにしてもこの映画の最後は、なんていうか、つらいですね。でもきっとのし上がっていくのでしょうね!男なんかに負けてたまるかー!!

投稿: mizusiki | 2006年12月14日 (木) 10時33分

mizusikiさん
恐いなー(笑。

溝口健二作品を観たいのなら、17日まで東京国立近代美術館フィルムセンターでやってますよ。
日替わりですが、明日は「雨月物語」と「藤原義江のふるさと」。
雨月は言わずと知れた代表作です。
妖艶な空気がスクリーンからあふれ出てきますよ。

投稿: トモヒコ | 2006年12月14日 (木) 21時39分

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