魂のダンス、ヤン・リーピンの「シャングリラ」

19日、渋谷のBUNKAMURAにあるオーチャードホールで行われた舞台「シャングリラ」を観て、ムキムキと魂を剥かれて、ヒリヒリ泣いてしまった。
怒涛のように押し寄せる澄み切った歌声が劇場に響き渡ると、皮膚や肉も突き抜けて、直接、魂に共鳴しだした。すると、自分が透明人間になってしまったような錯覚に陥って、気づくと、涙ト鼻水がツーっと垂れていた。
森羅万象を体で表現するダンスは、型破りで、先が読めず、美しく、見ているだけで心が湧きたってくる。そして、
ああ、一緒に踊りたい!
と思ってしまう。
中国では国宝級と崇められているダンサー、ヤン・リーピンがプロデュースし、自らも踊る約80人で構成された舞台。
雲南省にいる少数民族の舞踊を中心にした舞台で、原則は、その土地で踊られているものをそのまま舞っている。ダンサーは、みな、現地で選び抜かれた声自慢、舞自慢の普通の人たち(ヤン・リーピン本人も少数民族ペー族出身)。
だからなのか、生まれ育って身についた土地のエッセンスを、無条件で、踊ってみせる。それは、もう、血で表現しているとしか言いようがない。
雲南は英語でシャングリラと呼ばれ、その意味は、理想郷。自然豊かな土地で、今も、大地と対峙しながら生きているエネルギーが、ダンスという起爆剤で炸裂して、そのエネルギーったら、都会のへなちょこビッグヘッドをノックアウトするのは、おちゃのこさいさいなのだ。
第一章は太陽。
雲南で、数多くの部族にとって、太鼓はバチが男根、太鼓が子宮を象徴し、そのパフォーマンスは、生殖と繁栄のシンボルとされているらしい。男の力強いソロから大勢の女が華やかに舞いながら叩く姿と、そこから生まれる鼓動は、生命力が溢れていた。
第二章は大地。
賑やかだった太鼓とは打って変わって、大きな満月の中で、ヤン・リーピンがソロで静のダンスを舞う。指の先から足の先まで一本の線のようにしなやかに舞う姿は、まるで子宮につきささる精子のようにも見え、静かだけれど、はやり、生命力に満ち溢れている。
小さいころから、なぜか、月に惹かれるのだけれど、言葉じゃない部分で、なぜ惹かれるのかがわかった気がした。
そして、ダンスは、赤(太陽?)と黄色(月?)の菅笠に似た帽子をかぶった集団が現れ、「女儿国(女性の国)」を舞いはじめる。顔は伏せたままで見せないのだが、ジャネットジャクソン顔負けのスピーディーで力強いダンスが、穏やかな口調で語られる詩にのって舞われる。母系社会の女の性を歌った詩なのだが、これが、ストレートで哲学的、男はひたすら首を垂れてうなだれるしかないパワフルでカッコいい歌なのだ。
太陽は休んでもいい、
月も休んでもいい。
でも、女は休まない。
もし、女が休んだら、かまどの火は消える。
扉の隙間から冷たい風が老人の頭を痛めつけるなら、
女はわが身をもって風を遮る。
道端のいばらが子供の足に刺さるなら、
女は我が身を山道に敷く。
女が家にいるとき、その家族はひとつになる。
もし、女がそばにいれば、男は山崩れにも耐える。
苦すぎて食べれないソバはない。
苦すぎて噛めないキンマクルミはない。
女にとって辛すぎる挑戦はない・・・・・・・・・
(プログラムから抜粋)
と更に続く。
そして、顔を見せない代わりに、掌には心の目が大きく書かれていた。
うううう・・・・
そして、娘たちの甲高く澄み渡った、3拍子で歌い、2拍子でステップを踏んで、1拍子で手を叩くという神業のダンスへと続くのだ。
もう、鼻水涙が止まらない。
第三章は故郷。
虫や動物の動きになぞらえて、男女のペアーが舞う。
ある時は、鳩のようにキスをして、
虫のように腰を振り、
熊のように体を伸ばす・・・・
それは、セックスを象徴しているのだろう。
最後には、ステージの真ん中に赤ん坊が産み落とされる。
人間も、森羅万象の中のひとつなんだということを改めて気付かせてくれる。
第四章は聖地巡礼。
マニ車を回し、ひたすら祈るチベット族たちの姿が描かれている。
「金色の峰にある金色の湖、そこに生える金色の木の枝に、金色の鳥がとまってさえずる」
人々が祈る理想郷のイメージ。
それとはかけ離れた現実が、今、チベットにあり、そのギャップのせいかとても悲しかった。
そして、第五章は孔雀の精霊。
これはヤン・リーピンが創作した、彼女の出世作。
闇の中で白いドレスをたとい、カクカクとしていながら限りなく滑らかに動く様は、本物の孔雀にしか見えなかった。その表現力の凄さは、神がかりといえるほどすさまじかった。彼女は、学校で踊りを習ったわけでもなく、幼いころから踊りが好きで、ひたすら踊っていたという。そういった意味でも、天性の踊り子なのだ。そして。踊りのうまい人はいくらでもいるだろうが、神がかりな舞を見せられる人は、この世にそういないと思う。
この「シャングリラ」は中国本土でも、クンミンで定期的に上演されているらしいが、ヤン・リーピン本人が舞うことはほとんどないという。そして、本当にそうなるかは分からないが、プログラムによると、この日本公演を最後に、彼女本人がステージに立つことは辞めるらしい。これからは、今まで膨らませてきたアイデアを創作する方へまわるといっている。だとすれば、今回の公演を見れたことは、本当に貴重だ。まあ、それを抜きにしても、すさまじいステージだった。
観終わった後は、すっかりやられてしまって、寝込んだ。
(風邪か?)
「シャングリラ」の一部映像が見れるサイト
見てない奴は、ダフ屋使ってても行くべし!
あ、明日までだ・・・
※どういう形かは知らないが、オリンピックでも彼らがパフォーマンスすることになっているらしい。複雑・・・・・。
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